建設業の許可 (第3条)
第三条 建設業を営もうとする者は、次に掲げる区分により、この章で定めるところにより、二以上の都道府県の区域内に営業所(本店又は支店若しくは政令で定めるこれに準ずるものをいう。以下同じ。)を設けて営業をしようとする場合にあつては国土交通大臣の、一の都道府県の区域内にのみ営業所を設けて営業をしようとする場合にあつては当該営業所の所在地を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、政令で定める軽微な建設工事のみを請け負うことを営業とする者は、この限りでない。
一 建設業を営もうとする者であつて、次号に掲げる者以外のもの
二 建設業を営もうとする者であつて、その営業にあたつて、その者が発注者から直接請け負う一件の建設工事につき、その工事の全部又は一部を、下請代金の額(その工事に係る下請契約が二以上あるときは、下請代金の額の総額)が政令で定める金額以上となる下請契約を締結して施工しようとするもの
2 前項の許可は、別表第一の上欄に掲げる建設工事の種類ごとに、それぞれ同表の下欄に掲げる建設業に分けて与えるものとする。
3 第一項の許可は、五年ごとにその更新を受けなければ、その期間の経過によつて、その効力を失う。
4 前項の更新の申請があつた場合において、同項の期間(以下「許可の有効期間」という。)の満了の日までにその申請に対する処分がされないときは、従前の許可は、許可の有効期間の満了後もその処分がされるまでの間は、なおその効力を有する。
5 前項の場合において、許可の更新がされたときは、その許可の有効期間は、従前の許可の有効期間の満了の日の翌日から起算するものとする。
6 第一項第一号に掲げる者に係る同項の許可(第三項の許可の更新を含む。以下「一般建設業の許可」という。)を受けた者が、当該許可に係る建設業について、第一項第二号に掲げる者に係る同項の許可(第三項の許可の更新を含む。以下「特定建設業の許可」という。)を受けたときは、その者に対する当該建設業に係る一般建設業の許可は、その効力を失う。
この条文では、建設業者は原則として建設業許可を受ける義務があることと、許可の内容について定めています。
【1項】
(1)国土交通大臣許可(大臣許可)と知事許可
・大臣許可=2つ以上の都道府県の区域内に営業所をかまえる業者が受ける許可
・知事許可=1つの都道府県の区域内に営業所をかまえる業者が受ける許可
なお、2項を要約すると「建設業許可は、一般建設業と特定建設業の区分ごとに29業種それぞれ種類ごとに行うこと」という趣旨の内容が記載されていますが、例えば、千葉県の営業所では左官工事業の許可を持っている建設業者が、東京都の営業所で塗装工事業の許可を取得するならば、それぞれの都道府県で知事許可を取得するのではなく、左官工事業と塗装工事業をセットにして大臣許可を申請すべきということになります。
なぜなら、3条は、建設業の許可を出す役所をその営業所の所在地を基準として特定することを目的にしており、許可の区分や業種によって許可する役所が複数になることは、そもそも論として建設業法の趣旨からみて妥当ではないと考えられているからです。
(2)「営業所」とは
本店や支店など建設工事の請負契約を締結する事務所のことを言います。したがって、兼業をしている場合など、建設業とは全く関係ない営業所や単に登記上の本店等に過ぎないものは含まれません。なお、海外に設置された営業所も含まれないと解されております。
また、建設業に関係がある事務所であっても特定の目的のために臨時に置かれる工事事務所や作業所や、単なる事務連絡のために置かれる事務所も該当しません。
(3)軽微な建設工事(500万円未満)のみを行う業者は建設業の許可を受ける必要はありません。ただ、軽微な工事のみであっても建設業許可を取得することは可能です。
(4)一般建設業許可と特定建設業許可
建設工事の施工はそれぞれ独立した専門工事が総合的に参加しているため、建設業は特に元請・下請構造が強い業種であり、「親亀がこけると子亀もこける」といったかたちで連鎖倒産のリスクが高いです。
したがって、建設工事を下請けする業者の体質を強化すると同時に保護することを元請業者に義務付ける必要があります。
特定建設業の許可の対象となる業者は土木工事業や建築工事業のような下請施工が前提の一式工事業者が多いものの、それ以外の専門工事でも発注者から直接請負う1件の建設工事につき4,000万円以上の工事を下請けさせるときは特定建設業の許可を受け、下請保護の義務を負わなければならないのです。
なお、下請けさせる金額が1件の工事につき総額4,000万円以上(建築一式工事の場合は6,000万円以上)の場合に特定建設業の許可が必要なのであり、たとえ1億円の工事を元請として受注しても全て自社施工するか下請け金額が4,000万円未満であれば一般建設業の許可でも施工することはできます。
また、
【2項】
特定建設業の許可と一般建設業の許可はそれぞれ29業種ごとに分けて取得します。
建設工事はその種類ごとに必要な施工技術が異なり、それぞれ29業種ごとに許可を行うことが、建設業者の資質の向上と適正な施工能力を確保するために必要だからです。
【3項】
許可の有効期限
許可の有効期限は5年とされ、許可の更新を受けなければその効力を失います。
【4項】
許可の更新を申請しても新たな許可、または不許可処分がされるまでは、前の許可のままで営業ができます。
【5項】
許可の更新がされたときは、許可の有効期限は、前の許可の有効期限満了日の翌日から起算します。
【6項】
一般建設業の許可を受けた建設業者が、その業種で特定建設業の許可を受けたときは、その業種の一般建設業の許可は失われます。
たとえば、管工事で一般建設業許可を取得している建設業者が、管工事の特定建設業の許可を取得したら、管工事の一般建設業許可は失効します。
なぜなら、もしも、時と場合によって建設業者が「一般」と「特定」を使い分けたら社会が混乱しますし、役所の手続きも煩雑化してしまうからです。
なお、逆に特定建設業の許可を受けた建設業者が、例えば技術者の退職等で要件を満たせなくなった等、許可の有効期間中に一般建設業の許可を受ける必要性が予想されますが、建設業法ではこれに関しては特別な規定を置いておりません。
したがって、こういったケースでは、変更届を提出して許可の取消しを行うか、廃業届を提出して許可の取消を行った上で別途一般建設業の許可を取得するのが妥当であると思われます。
第三条の二 国土交通大臣又は都道府県知事は、前条第一項の許可に条件を付し、及びこれを変更することができる。
2 前項の条件は、建設工事の適正な施工の確保及び発注者の保護を図るため必要な最小限度のものに限り、かつ、当該許可を受ける者に不当な義務を課することとならないものでなければならない。
本条は、建設業者が許可を取得するにあたって求められる請負契約に関する誠実性、財産的基礎等の要件をより長期間にわたって維持させるために、許可を出す行政庁が許可に一定の条件を付けることがきでることを定めています。
【1項】
国土交通大臣や都道府県知事は建設業の許可に条件を付けたり、変更したりすることができる。
【2項】
ただし、その条件や変更は、建設工事の適正な施工の確保と発注者保護のための必要最小限度のものに限られ、同時に、許可を受ける人に不当な義務を課すようなものではいけません。