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造園の日本史

造園の歴史

造園は日本史を語る上で欠かすことが出来ないくらい重要で造園=日本史と言っても過言ではないと思っております。

古くは飛鳥時代の宮廷庭園に始まり、平安時代後期には既に、日本最古の庭園書、かつ、現在も造園書のバイブルとされている『作庭記(さくていき)』が編纂されました。

そして、造園の面白い点は、その時代に生きる人々の文化や思想を反映しながら様々なトレンドの変遷を繰り返していることです。

大まかなブームの流れをご紹介していきたいと思います。

平安時代~貴族の時代

貴族たちの理想郷である「極楽浄土」の世界観を再現して園池を配置した「浄土式庭園」が流行る。

代表作:10円玉でお馴染みの宇治平等院の庭園

鎌倉時代~初の武家政権が誕生!

臨済宗の禅の思想が反映され、自然の景観を活かした庭園が流行る。

なぜ突然に臨済宗なのか。それは武家政権の勃興により、武家VS公家の構図が出来たからなんです。
鎌倉幕府は、公家が支持する平安仏教(真言宗、天台宗)ではなく、当時、新興した臨済宗を庇護しました。臨済宗は、平安仏教サイドから弾圧を受けていたために幕府にとっては「敵の敵は味方」となったわけです。

代表作:京都天龍寺の庭園

室町時代~禅カルチャーの集大成

平安・鎌倉時代のベースをとりつつも、禅の精神を石と白砂だけで表現する、あの有名な「枯山水」という新しい様式が流行る。

武家政権の室町幕府は鎌倉幕府と同様に禅宗を庇護しました。そして、臨済宗は幕府や守護大名とさらに強い関わりを持ち、禅僧達は政治顧問や外交官として重用されました。その流れで、将軍や大名の保護を受けて禅宗文化は日本全国に流行し、漢詩や水墨画、書院造りの建物と庭園、能や華道・茶道などの芸能など、今でいう「京風文化」のほとんどが室町時代に誕生しました。

代表作:「枯山水」でお馴染み京都の龍安寺

安土桃山時代~乱世・戦国の世

室町期の質実剛健さに加えて、華麗なまでの石組構成を見せる様式が流行る。
戦乱に次ぐ戦乱の時代において、戦国武将や大名が庭園文化をリードし城郭庭園が盛んに造られました。乱世・戦国の世を生き抜いた武将たちが好むのは、力強く豪快な作風の庭園だったのです。

代表作:醍醐寺の三宝院庭園

その一方で、千利休によって茶道が完成したことで、茶室に付随した「露地」と呼ばれる簡素な茶庭の様式も存在しました。

力強く豪快な武士達の庭園とは対照的に、「露地」は「より狭く、より質素に」すればするほど美しいとされ、その極端なアンビバレントさこそが乱世の象徴であり、今でも大河ドラマで人々を魅了し続ける力なのかもしれないと感じます。

江戸時代~さらに豪華に

巨大テーマパーク「大名庭園」が流行る。

「大名庭園」は江戸をはじめとする各地諸藩の大名の邸宅や別荘に設けられた庭園であり、全国の大名は、参勤交代のため、江戸に複数のお屋敷を持っていました。そして、将軍の御成などに備え、どの大名も競って豪華なお庭を造ったのです(当時の江戸は、面積の約50パーセントがこのような大名庭園と大名屋敷で占められていたそうです)。

さらに、江戸で生まれた「大名庭園」は、全国へと広がり、各藩で個性豊かな「大名庭園」が生まれます。
各藩は「大名庭園」を遊興や、馬術用馬場や弓術用の的場、散歩・散策などを楽しむ空間として、池のまわりを回遊して観賞するように造られ、庭園内の景観として自分の好む名勝地をモチーフとしたものを配置しテーマパーク化していきました。
例えば、水戸の偕楽園は300ヘクタール(東京ドーム64個分!)ですから、もはや「庭」の領域を超えたテーマパークそのものです。先日、観光で訪れたときに万歩計をみたら物凄い数字をはじき出し、驚きました。

水戸の偕楽園

明治時代~迫りくる西洋カルチャー

明治維新により西洋文明が堰を切ったように流入してきた。文明開化の流れは庭園界にも押し寄せ、江戸時代を通してややマンネリ化した伝統的技法は敬遠され、それまで伝統を踏襲してきた日本庭園の世界にも新たな潮流が生まれる。
特に明治の庭園界に大きな影響を及ぼしたのは、長州出身の山縣有朋で、彼の庭園観では、豪壮・雄大な自然風の景観が最上とされ、それまでの寺の庭や茶庭などが宗教的世界観や「詫び寂び」の世界といったものを表現するために作られ、伝統的な形式とは全く異なるものでした。

代表作:東京の椿山荘(ちんざんそう)

現代~公害とエコ

戦後の高度経済成長期には、公害など環境に関する数多くの問題が生じました。
その反省を踏まえ、近年は自然環境保全への関心が高まり、造園は都市の緑化事業といった環境改善などの役割も期待されるようになってきました。
歴史のなかで変遷し、熟成されてきた日本の造園の精神と技法はこれからの時代も変遷を繰り返しながら進化していくと私は信じております。

代表作:コープ共済ビル

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