建設業許可の種類:一般建設業と特定建設業の違い
許可の区分(一般建設業と特定建設業)
建設業の許可には、一般建設業の許可と特定建設業の許可の2種類があります。
一般建設業許可は、そもそも工事を下請に出さない場合や、下請けに出す場合でも1件の工事代金が4,000万円未満(建築一式工事の場合は6,000万円未満)の場合に取得する許可です。
一方、特定建設業許可は発注者から元請業者として直接工事を請け負った工事について、下請代金の額が4,000万円以上(建築一式工事は6,000万円以上)となる場合に取得する許可です。
たとえば、発注者から2億円の建設工事を請け負った建設業者が下請業者とトータルで下請代金1億円の注文をしたとします。この場合、発注者から2億円の建設工事を請負った建設業者は特定建設業許可が必要な業者ということになります。
上の例でさらに下請け業者が孫請業者と専門工事下請代金4,000万円以上の下請契約を締結した場合でも、下請業者は特定建設業の許可を受ける必要はありません。なぜなら、特定建設業許可は発注者から元請業者として直接工事を請負った建設業者が取得すいるものだからです。
なお、一般建設業の許可と特定建設業の許可は、業種の違いにより、ある業種で一般建設業の許可を、他の業種では特定建設業の許可を受けることはできますが、同じ業種で、一般建設業の許可と特定建設業の許可の両方を同時に受けることをできません。また、営業所ごとに一般建設業と特定建設業を分けて取得することもできません。
※建設業許可の29業種の詳しい解説はこちら
ケース別にみる必要な建設業の許可申請
ケース | 必要な建設業の許可申請 |
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千葉県内で500万円以上のガラス工事・板金工事の下請けを目的とする(株)やまだ工業を設立。いまのところ事業を県外に拡大(支店を県外に持つ)する予定はなく、元請けとなることも想定していない。 | 千葉県知事許可 一般建設業・新規(法人)の許可申請が必要 |
山田太郎は、工業高校の建築学科を卒業し18歳~26歳まで父の経営する工務店で修行。その後、千葉県で自営業(営業所は自宅営業所のみ)を始めて8年経過し、建築一式工事と大工工事の建設業許可の取得を考えている。いまのところ、建築一式工事6,000万円、大工工事4,000万円以上の工事で元請になる予定はない。 | 千葉県知事許可 一般建設業・新規(個人)の許可申請が必要 |
千葉県と東京都に営業所を持つトーカツ(株)が土木一式工事と大工工事、管工事の建設業許可を受けようと考えている。これまで軽微ば工事を下請けとして行ってきたが、今後は4,000万円以上の工事を元請業者として行う予定である。 | 大臣許可 特定建設業・新規(法人)の許可申請が必要 |
これまで千葉県にて、建築一式工事と内装仕上工事の一般建設業の許可を受けていた(株)ヒラバヤシ建築事務所は、元請業者として6,000万円以上の工事を行う可能性があるため、近日中の更新時に特定建設業で受けなおし、あわせて大工工事と屋根工事の一般建設業を追加したいと考えている。 | 「千葉県知事許可 一般建設業・更新(法人)」に加え、「特定建設業の新規(般・特新規)と「一般建設業の業種追加」の許可申請が必要 |
これまで千葉県で電気電気工事の一般建設業許可を受けて営業していたシバタ電気工事(株)が、東京にも営業所を新設することになった。なお、新たに行う事業内容に変更はない。 | 「大臣許可 一般建設業・新規(許可換え新規)」の許可申請が必要。 ちなみに、千葉県知事に対して廃業届をする必要はない。 |
専任技術者に関する要件の強化(特定建設業の場合)
①指定建設業(7業種)の場合
29業種ある建設業許可業種のうち、次の7つの業種については、「指定建設業」として、専任技術者を1級の国家資格者または国土交通大臣が認定した者から選任しなければなりません。つまり、工事経験や学歴だけでは専任技術者にはなれないということです。
・土木工事業(土木一式工事)
・建築工事業(建築一式工事)
・電気工事業
・管工事業
・鋼構造物工事業
・舗装工事業
・造園工事業
②指定建設業以外の建設業(22業種の場合)
元請業者として工事現場監督や現場代理人のような資格で工事の技術面を総合的に指導した一定期間以上の実務経験をもっている人を専任技術者に選ばなくてはなりません。
財産的基礎
①一般建設業の許可の場合
工事を請負うにあたって、工事が滞りなくできるよう、ある程度の金銭的な信用が必要になります。
具体的には、以下A~Cのどれかをクリアする必要があります。
A. 自己資本が500万円以上あること。
資本金ではなく自己資本トータル(貸借対照表の純資産の部)でみます。つまり、貸借対照表の資産から負債をひいた金額です。なお、許可を受けようとする直前の事業年度の決算書で審査されます。
B. 500万円以上の資金調達能力があること
自己資本が500万円以上ない場合、金融機関発行の500万円以上の預金残高証明の提出することでクリアできます。
例えば、月末に売掛金の入金が多めにあったので残高が500万円以上あるけれど、月初にはすぐ支払いがあって500万円を切ってしまうという状態であっても、500万円以上の金額がある状態で銀行残高証明書を取得しておけば財産要件を満たすことができます。
ただし、預金残高証明は、建設業許可の申請時点で1ヵ月以内に発行したものを提出しなければならないため、預金残高証明も出せない場合もあると思います。
その場合は、銀行の融資証明書を代わりに提出することになります。
C. 直前の5年間で許可を受けて継続して営業した実績があり、かつ、現在許可を持っていること。
②特定建設業の許可の場合
発注者との請負契約で、8,000万円以上の工事が出来て、下請業者に支払いの遅延を出さないだけの財務基盤が必要となります。
A~Dのすべてを満たす必要があります。
事項 | 要件 |
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A. 欠損比率※ | 繰越利益剰余金の負の額ー(資本剰余金+利益剰余金+その他利益剰余金(繰越利益剰余金を除く)/資本金 × 100 ≦ 20% |
B. 流動比率 | 流動資産合計/流動負債合計 × 100 ≧ 75% |
C. 資本金額 | 資本金 ≧ 2,000万円 |
D. 自己資本 | 純資産合計 ≧ 4,000万円 |
※欠損比率について
繰越利益剰余金がある場合は要件を満たしているので計算式を使う必要がありません。また、繰越利益剰余金がマイナスだったとしても、資本剰余金(資本剰余金合計)、利益準備金、その他利益剰余金(繰越利益剰余金を除く)の合計が繰越利益剰余金のマイナス額を上回る場合にも同じです。